物理法則を知らない。

デュエルポケットモンスターマスターズ

読んだ本の紹介とか その8

f:id:byouketu:20180527124359j:plain

 仕事の合間に読書読書。早速読み終わったので、感想とか書いて行こうと思います。

 

 昨日はキャラデザと名前、能力だけで展開を予想したりしていましたが、一つ大きな勘違いをしていました。自分はてっきり「狼」というのは殺人鬼の比喩だと思って、人狼的なものを想像していたのですが、蓋を開けてみればそのまま「狼」が襲ってくるというものでした。なので、人狼ゲームというよりは『ホームアローン』シリーズのような、拠点に侵入してくる外敵を排除する防衛戦――タワーディフェンスノベルとでも言うべき形で進行していきます。

 それと、「裏切り者」という単語に推理モノ的な意味合いを期待したのですが、作者のあとがきを見る限りでは「怪物に追いかけられる」というホラー色を足した『あかずきん』だそうです。メルヒェンホラーとでも言うべきでしょうか……? ただ、個人的には怪物が「狼」という良く知った形を取っていること、リアリティを追及したためか弱点が存在してしまうこと、知能が高いがために意思疎通を可能にしてしまったこと……この辺りのために恐怖という感情は全く抱きませんでした。

 

 謎解き、ギミック等については「裏切り者は誰か?」が主となると思うのですが、「狼」が目立ち過ぎて正直「裏切り者どうでもよくね?」と思ったり……。ホームアローンしながら物語が進むために、推理よりも主人公たちの奮闘を見る機会の方が多めでした。

 

 キャラクターについて。扉絵で見た印象と実際が違うことがちらほら。特性をまとめてみると以下の通りでした。

バラ:年相応の少女。状況判断が早く常識的(?) <秘薬>付着させた対象の臭いを消失させる(乾燥や水に弱い)

紅茶:口数が少なく淡々としている。 <秘薬>付着させた対象を透過する(無機物限定。加えて乾燥に弱い)

リンゴ:最も思慮深く博識、穏やかで母性的 <秘薬>食した対象を動物に変化させる(感覚器や知能まで変化させる。効果は1時間)

ザクロ:気は強いけどすぐヘタれる。なんとびっくり赤子連れ <秘薬>液体に接触した無機物を粉砕する(少量でも大規模な破壊を招く)

チューリップ:ドジっ娘。頭のネジが一本飛んでいる <秘薬>自然発火する軟膏(炎はすぐに消える)

ツバキ:含みのある言動を行う狂気の娘 <秘薬>一肌程度の温度で凝固し、高音で融解する液体(凝固時には1tの重圧にも耐える)

 こうして並べてみると、特にチューリップ、ツバキの性格は違いました。また、ザクロが子連れというのも意外。

 扉絵の次のページに普通に登場人物一覧として性格等が書かれていました^p^

 

内容に言及したいため、ここからはネタバレ要素を含む感想です。要反転ということで。ご了承を……。

 「ジェヴォーダンの獣」について。

その1:嗅覚が無い、視覚が弱い点(狼は動かないものを認識しづらい)

 作中時間内での去年、地下壕に水を流し込んで「赤ずきん」を溺死させ、その死体まで食べた……ということですが、流水によって「臭いを消し、狼のみ認識できる赤色に染める秘薬」の効果が失われた死体をどうやって認識できたのか?

 ……まあ、死体が浮上する箇所を予想して、回収したとも考えられますが。

 

その2:「動物に変身させる秘薬」の効果(以下:リンゴと呼称)

 実在の動物に適応しているようですが、なら「名もなき赤ずきん」を「ジェヴォーダンの獣」へ変身させたリンゴってそもそも何の動物に対応していたの?

 幻想動物がありならドラゴンとかもっと強そうなのがいてそうですし、絶滅種もありなら恐竜やサーベルタイガー等が優先されそう……。ということから、元となった動物そのものはオオカミだと思います。ただ、“筋力を増強する秘薬”とか“皮膚を硬化させる秘薬”といったものがあったと仮定し、それらで「ジェヴォーダンの獣」という怪物を生み出したのではないかと考察していますが、どうなんでしょう? バフてんこ盛り!

 「裏切り者」が「ジェヴォーダンの獣」の型落ち程度の狼に変身していたことから、普通のオオカミではない“オオカミに似た怪物”のリンゴがあったのかもしれませんが。この場合現在の「ジェヴォーダンの獣」が寿命で死去した後にも別の「ジェヴォーダンの獣」を用意できるため、筋は通ります。また、リンゴずきんがリンゴの刻印をすり替えていたことに気付かなかった点にも筋が通ります(ヘビとナマズのあれ)

 

 「秘薬の製作者の血が多く混ざると、秘薬は効力を失う」という設定は、「ジェヴォーダンの獣」が「赤ずきん」を捕食する最大の理由だと思うのですが、この設定のため“何故リンゴずきんを捕食した「ジェヴォーダンの獣」は元の姿に戻らなかったのか?”という疑問が浮上します。

 一:効果時間が長すぎて復帰に時間が掛かった→作中の「ジェヴォーダンの獣」は徐々に弱体化していた可能性を持ち、一番納得できる。

 二:リンゴずきんの血液の成分が「秘薬」により変化した→「名もなき赤ずきん」に与えたリンゴを作成した当時が“若返り前”なら、血液成分が変化していても不思議じゃないかも?

 三:秘薬の効果を任意時間延長する秘薬の効果→紅い月で薄まっている時点でないと思いますが、一応。秘薬の原則まで破壊できるなら最強なんですけどね。

 

「裏切り者」の持つ秘薬たちについて(あと、「ジェヴォーダンの獣」は以後:ケモノ。「裏切り者」→魔女。匂い消しの秘薬→香水)

その1:「臭いを消し、狼にのみ認識できる赤色に染める秘薬」

 ケモノの驚異的な補足能力のギミック。疑わしい要素がこれしかなくて、消去法で分かってしまう点が惜しいと思いましたが、同時になるほどと思ったもの。

 これの効果について、ちょっと曖昧な部分が残りました。まず「秘薬の効果を延長する秘薬」によってどの程度延長されるのか? という点。例えばリンゴであれば明確に“一時間”とあるため想像しやすいですが、“乾燥と流失”によって効果が失われる香水はどうなるのでしょう? 「数か月前に別の土地に逃げた赤ずきんが補足された」ことからそうした物理的な効力の喪失にも作用できると見るべきでしょうか。ただ、出発する前の赤ずきんに「お守り」として香水を振りかけるのは分かるのですが、その後「効果延長の秘薬」を使用するのはタイミング的に難しいような。

 余談ですが、チューリップが香水をばら撒いた畑にも間違いなくケモノは立ち寄ったと思うのですが、一体どういう風に映ったのでしょうかね(笑)

 

その2:真実を語る秘薬

 最初からこれを「従者」に使って、裏切るかどうかを確認しておけば最後の結末になる前に裏切りが発覚したのではないでしょうか。または、在庫切れだったとか?

 

その3:予言の秘薬

 これも使っておけばいいのに、というもの。取引の交渉材料にしたことから在庫切れということはないと思うのですが……嘘をついている可能性は否定できませんね。あと5人を殺すために使うというのに躊躇したのかもしれません。エリクサー症候群。

 

 ネタバレ終了です。

 この手法、スマホが登場した最近だと反転というものがないので、面倒臭かったりするんですよね。スマホで閲覧されている方には申し訳ないです><

 

 色々な都市伝説(「ジェヴォーダンの獣」やエリザベート・バートリ)、童話(『三匹の子豚』や『赤ずきん』)などがモデルになっていますが、いくつかは物語の核心に迫りかねないレベルで引用しているため、そういうオカルトチックなものが好きな人だと確信を得るのが早いと思います。

 

 以上、『六人の赤ずきんは今夜食べられる』でした。

 推理モノとして期待していたため物足りなさは感じましたが、メルヘンタワーディフェンスとしてはアリなのではないでしょうか? 題材の割にゴア、シリアス要素は薄目なので読みやすいと思います。

 調べてみたら「小説家になろう」という投稿サイト発の作品のようですね。偏見込みですが、あそこのユーザー層を考えるとこのくらいの謎解きとエンディングで丁度いいのかもしれません。

 お手軽なパズル感覚――ということで読むのであればライトに楽しめるノベルだと思います。

 

 個人的に勿体無いなと思ったのは、作者から作品に対する愛のようなものがあまり感じられなかったこと。以前に紹介した『図書迷宮』であれば、作者の作品愛をひしひしと感じられたのですが、今回のものはそのあたりがやや希薄。書きたいもの(思想や言葉、世界観など)を書いたのではなく、思い付いた面白そうなストーリーを書いた……という感じ。書籍化にあたりかなり改稿されたようなので、その過程でアマチュアプロらしい“書きたいものを書く”という熱量が削がれてしまったのかもしれませんが……。

 もっとも、出版社の指示かどうかは分かりませんが、「このキャラはお気に入りなのかな?」というものは存在しましたが。

 

 先日色々とノベルを買い込んだので、暇を見つけては読んで行きたいと思います。次は謎解きとかなさそうな、ストーリー一本勝負なやつを読もうと思います。