物理法則を知らない。

デュエルポケットモンスターマスターズ

読んだ本の紹介とか その18

 そんなに経った気はしていませんでしたが、随分と開いた更新となりました。

 書くことがなかったわけではないのですが、やはり身を置く環境が変わると、ついつい気力が削がれてしまいますね。また今度、また今度、と重ねるうちに一年近く過ぎているとは。

 いつの間にかhatena blogの仕様が変わっていてどう記事を書けばいいのかと格闘しております……。

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 今回は「ギルドの受付嬢ですが、残業が嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います」を1、2巻と読みました。

 長い題名ですが、この文化が生まれて10年くらいになるので流石にそろそろ慣れました。最初は抵抗感があったものの、受け入れてみれば作中で何をやるのかがハッキリしているので購入作品を選ぶ際の目安として便利だなと思ったり。

 別に受付嬢がボスをソロ討伐することを目当てとして買ったわけじゃないんですけどね。目を惹かれるのはやはりイラスト。Vtuberの湊あくあ(?)の担当絵師らしく、その以前より見かける機会のあった有名クリエーターですね。

 絵で地雷を踏みぬいた経験は多々あるので、騙されません。自分が購入するに至った動機は、この作品は電撃文庫小説大賞で金賞を獲得したらしいのです。電撃文庫といえばライトノベル最大手と言っても過言でもない人気レーベルで、その倍率の高さを鑑みれば金賞作品に外れはない! ということで購入しました。

 

 以下は感想になります。

 

 あの電撃文庫がこれを金賞にしたのか……? という疑問さえ浮かびました。

 題名である程度察することは出来たのですが、いわゆる俺TUEEE系作品。それ自体は別に問題ではなく、その中にも数々の名作が存在することは認知しています。しかし本作、キャラの強さが本人の努力や能力とは無関係な部分で決まっていて、“どれだけ強いスキルを入手できるか”という謂わばガチャ要素で決定するんですね。棚ぼたチートも最近では珍しくないのですが、やはり何の苦労もせずに最強の位置についたキャラが周りを見下す発言を繰り返すのは気分がいいものではありませんでした。

 ただ、この部分については2巻で触れられていて(主人公の言動にはノータッチ)、ただの神の気まぐれで人生の優劣が確定する理不尽さに抗おうとするキャラ、或いは組織が登場しました。残業というリアルな題材を扱うにあたり、生まれの良し悪しなどといった現実に存在する格差問題も混ぜていくのでしょうか。

 題名のように残業描写はもちろんとして、恐らく才能や容姿、コミュニケーション能力への意識など、社会人が持ちうる羨望や妬みも書かれていて、部分部分に闇の深さを読み取ることが出来ます。

 キャラクターを書くにあたり、舞台装置の歯車として運用するタイプ、理想を詰め込むタイプ、自己投影するタイプがあると思っているのですが、この著者は自己投影されている場面が多く見られますね。上記のような残業、他闇の深さ然りなのですが、主人公の戦闘描写といえば一方的な暴力を振るい暴言を吐く――というものなのですね。1巻執筆当時はサラリーマンの傍らということでしたので、ストレスが溜まっていたのかなと。

 上記の自己投影もそうですが、2巻を読んでより思ったことは、主人公(17歳)は当初の設定では20代の設定だったのではないか? ということです。ノベルでの文章を拾う限り、

:就労3年目 :2年前の祭りにてチートスキル入手 :就労2年目で祭りへの参加意欲を高める 

――と、矛盾はないのですが若干違和感が覚えられます。スキル入手の2年前と言えば就労1年目であり、「百年祭に行きたい、と強く思い始めたのは受付嬢二年目のことだった」と「百年祭で、その日最も強い意志を持って力を望んだ者に、神の祝福が与えられる」とがどうにも噛み合わない気がするんですよね。時系列の数え方からして本来はもう少し時間に幅があったのかな? と思ったり。

 安直なのか裏がある伏線なのかの判別が難しい作品であり、2巻で白魔術師が回復スキルで“本来解除できないはずの状態異常を解除する”という場面があるのですが、ここが続編でどうなっていくのかが気になるところです。

 

 全体、まず文学的表現は一切なく、著者の力量が不明なので伏線なのか矛盾なのかの判別も付かない恐ろしさ。ですが非常に読みやすく、ここまでボロクソに批判しておきながらホイホイと2巻を購入してしまう始末。ライトノベルの“ライト”を良い意味で突っ走っているのかもしれません。

 よく分からん作品。それが本作の感想となります。

 正直イラストで買っていた気もしますが、ここまで未知数だと逆に関心が湧いてくるのでもう少し追いかけようと思います。