物理法則を知らない。

デュエルポケットモンスターマスターズ

読んだ本の紹介とか その18

 前回の記事を書いた頃には寒さが増してきた~なんて言っていた気がするのですが、月日も過ぎ、早いもので春を控えた晩冬となりつつありますね。しかし外は冬一番の冷え込みを見せつつある模様。巷では武漢肺炎なるものが流行しているそうですし、気の抜けない日が続きそうです。

 

 久しぶりの更新ですが、その間にも色々とノベルを読了していました。中々感想をまとめる暇がありませんでしたが、このたび久しぶりの連休ということで、ぼちぼち感想を書けたらなと思います。

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『八月の終わりは、きっと世界の終わりに似ている。』(著:天沢夏月)

 

 すげえ青春してそうな表紙だったので買いました。セカイ系か? と思いましたがまた違いました。

 主人公である「渡正吾」とヒロインの「葵透子」の恋愛譚です。と言っても透子は既に死去しているのですが(裏表紙に書かれています) 現在の正吾が遺品として持ち帰った、透子と交際していた当時の“交換ノート”を鍵にして未来と過去が繋がり、未来の正吾は“生きている透子”を前にして……? みたいな感じの作品でした。

 

 何を書いてもネタバレになると思うので、ここからはネタバレ要素ありで行きますね。

 

 まあ、タイムスリップものが初見じゃない時点でこの手のもののオチってパターンが絞られるんですよね。

1:タイムパラドックスが起こり因果が崩壊する

2:平行世界として処理される

3:過去に干渉することを織り込んで正史が進行していた

 これらは作中でも言及されることなんですけどね。っていうかタイムパラドックス云々って話には聞くんですけど、実際にそこにオチを持ってくる作品を見たことが無いんですよね。バック・トゥ・ザ・フューチャーの壁は厚い。

 当作は3の、未来の干渉を全て織り込んだうえで過去が進行する――つまり事実が覆らないというものでした。これでハッピーエンドになるならともかく、透子の死という結末が決定的なのは悲しくはありますが……この作品は過去の改変を主題としては書かれていませんでした。

 この作品で書かれていることは、透子は何よりも正吾からの愛を貫き、正吾は4年越しに透子の死を受け止めて未来へと歩き出せるようになった、という一途さと心境変化についてかと思います。単純に「過去は変わりませんでした」ってだけではない、人の意志が書かれた物語かなと。そして、死にゆく透子が見た夢の最期、未来の正吾の下へラムネ瓶が届く描写――時間を超えたのは未練ではなく、一途な愛なのだと、自分はそう解読したのですが、そこがとても好きな部分です。

 この作品で自分が好きな部分が二つ。一つは上で書いた透子の死亡シーンで、もう一つは透子の登場シーンですね。25ページ末からの一文なのですが、如何にも夏のヒロイン! って具合で好きです。

 中盤はやや中弛み気味でした。読みながら「ああ、これは干渉された結果として今の時間軸があるんだな」と察することが出来るので、過去を変えようと必死になる正吾との温度差がありました。中盤は夏っぽい“らしい”文章も少なかったですしね。告白シーンが月並みだったのも一因ではあるのでしょうけど。

 

 交換ノートが出てきたときは正直「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」と同じ感じになるのかな? とか思っていたので、方向性が違っていて良かったです。

 「海のカナリア」に続いて夏らしい恋愛譚でした。次は劇場アニメが放映されていた「HELLO WORLD」のノベライズか、京都アニメーションの「ヴァイオレットエヴァーガーデン」のノベル版、或いは「異世界誕生2007」の考察を書こうかと思います。