物理法則を知らない。

デュエルポケットモンスターマスターズ

アダルトゲームをやろう その1

 お久しぶりです病欠です。すっかり文章を書くという習慣を失くしてしまい、今更ながら、社会人でありながら趣味に打ち込みそれを発信する諸兄の力強さを知る日々です。

 

 ソシャゲやラノベに纏わる日記となりつつある当ブログですが、たまには異なるものを扱ってもいいだろうということで今回はアダルトゲーム……いわゆるエロゲを扱おうと思い、久しぶりの更新へと至りました。

SWAN SONG』2005年7月/Le.Chocolat

 エロゲ界隈(?)では不朽の名作として有名だそうですね。かくいう私も名前だけは知っていて、まとめ売りのラインナップに当作の名を見つけ購入した次第です。

 

 ハザード系(災害モノ)で、大震災に見舞われあらゆる日常が破壊された人々による群像劇です。大雑把に言えばね。

 作中ずっと雪と瓦礫に囲まれていて、まるで世界の終わりのようなビジュアルには退廃的ながらも美しさを感じました。自然の猛威の中で人々が懸命に生き足掻く姿は今日の我々が失いつつある、人間本来の強さでもあります。

 生存者同志で協力して物資を集め、集団の中で意思疎通を図り不文律ながらも秩序が生み出される。クリア後に思えば一番幸せだった頃かもしれませんね。
 この時点ではまだまだ先が見通せなくて、今を生きることに精一杯でしたし、「いつか救助が来るかもしれない」という希望的観測がまだ健在でした。明日に希望を持てないまでも、絶望するほどのピースも揃っていない。まさしく薄氷の上の……ですが、ある種の平穏でした。

 

 ここまではチュートリアル。より避難者の多い地域への移動を決意するところから本作が本当の意味で始まると言えるでしょう。

 人が多く集まる分、災害のもたらす不安・恐怖で狂ってしまった人々が描かれ、その煽りを受け疑心暗鬼が伝播し、徐々に秩序が崩壊していく様子が描写されます。群像劇ですので、それらの状況下においてそれぞれが何を思い、どう動くのかというところに本作の真髄が見られます。

 傷つけ合い、騙し合い、心身とも疲弊しきった苦境の中で、思想の違いに折り合いがつかず袂を分かったり……

 崩壊した秩序に尊厳を踏みにじられ、絶望的な明日が確定していても、なお立ち上がり続ける人の強さ、また、そこで諦めてしまう人の弱さ(画像の3人はメンタルが強すぎる……)

 

 本作には「人と人は分かり合えない」という冷たいテーマが存在するように思います。それを体現する、本当の意味での主人公が「佐々木柚香」です。

 いつも本音を隠し、人を信じていない。自分のことにさえ無関心で、「どうせ死ぬのだから」と幸福を放棄している……そんな人物です。また、作中において唯一最後まで一切負傷しない人物でもあります。柚香の潔白ながらも冷え切ったキャラクターは、まるで雪さながらです。

 あろえ(タイトル画面の少女)が対面した相手を反射する鏡(人物を写す役割)であるとすれば、柚香(画像の女)は世界を映す目の役割なのかもしれませんね。

 これは疑心暗鬼の末に全滅する√(俗称:教会エンド)の世界なのですが、完全に雪に覆われています。

 基本的に現実に沿って物事が展開する本作において、雪だけがファンタジーとして異彩を放っています。というのも、春が訪れてもなお雪は勢いを増して降り続けているのですね。そして、その雪こそが「人と人は分かり合えない」というテーマを体現していると思われます。

 つまり、この雪というものは人の心を覆い隠す「心の壁」です。拒絶と言い換えてもいいかもしれません。と同時に、柚香の本音でもあります。

 他者を理解することを拒み、傷つけ、騙し、犯し、その結末が上記画像の雪に覆われた死の世界です。そのルートの最後、無傷ながらも絶望し全てを諦めた柚香と、満身創痍でも何も諦めていない司の対比が際立ちました(あろえが修復した像に対する両者のズレこそ、あろえが鏡たる所以なのかも?)この両名がカップリングであるのも、皮肉ではありますがある意味お似合いなのかもしれません。

 そして二周目で発生するtrue end(調和エンド)では、急ぎ足だったものの「人と人は分かりえない」なりに歩み寄り、調和して生きていくという道を辿ります。

 ここでは雪が解け始め、覆い隠していたモノ(大量の死体、破壊された街)を露出させていき、柚香は「隠れたままの方がいいこともある」(うろ覚え)と言いますが、司は「それでも向き合わなくちゃいけない」(うろ覚え)と反論します。両者はやはり分かり合うことのないまま物語は終了しますが、解け始めた雪から柚香の心境にも変化が生まれ始めているのではないかと思います。或いは、人々の心が解れていく中においても未だ心を閉ざしているのかもしれませんが……。

 true endにおいて、司はヒマワリの種を配って回るのですが、当然こんな雪に覆われた土地じゃ育つはずもありません。ですので上記の画像は「※画像はイメージです」なのでしょうけれど(笑) 咲かないと知っていても、そこに希望があるならば植える。絶望せず諦めず、という司の精神が描写されているのでしょうね。

 心の壁、拒絶の象徴であった雪が解け、希望の象徴であるヒマワリが咲き誇るというのは美しい対比だと思います。花言葉まで考慮するなら「憧れ/あなただけを見つめる」ですので、柚香から司への恋情ともとれるかもしれません。

 

 巷では教会エンドの臨場感と衝撃が物凄くて、そちらが評価されがちだそうですが、自分は調和エンドの方が好きですね。最後は救われて欲しいという個人の好みかもしれませんが。

 私が一番好きなシーンはもちろんこのシーンです。恐らく作中でも一番人気のあるシーンなのではないでしょうか? 田能村の漢気と雲雀のヒロイン力の高さに思わず興奮してしまいました(笑)

 何だかんだで田能村が作中最大のキーパーソンなんですよね。教会エンドのときは心が痛かった……。

 司と妙子が兄妹というのも、調和エンドで知ってめっちゃびっくりしたのですが、言われてみると髪や瞳の色が同じなんですよね。天才特有の憑依(ゾーン)も共有していますし、ヒントはあったのかも。この年代のエロゲなのに妹が出てこないとは思っていましたが、隠されていた(?)とは(笑)

 音声を聞いていて、妙子の声が一番聞き取りやすくて可愛いなと思ったのですが、演じられている声優さんはのちにメインヒロインを張るような大物になっていったようですね。

 

 エロゲというより純粋なハザード系の読み物として大満足でした。心情描写が丁寧な作品は読みごたえがありますね。

 第一回アダルトゲームの記事はこれで終了となりますが、他に何作品か同時に購入していますので、お盆休みの内に更新できればいいなあと思います。

 ただエロいというものより、R-18指定ならではの描写を使った読み物という作品が好きなのでしょうね、きっと。