物理法則を知らない。

デュエルポケットモンスターマスターズ

アダルトゲームをやろう その2

 暇ですねお盆休み。ちょっと休み過ぎじゃないでしょうか、月曜日からは全国民労働に駆り出すくらいが良いと思います。体は労働を求める――

 『Chrono Box』NO BRAND/2017年5月

 これもエロゲ界隈では有名なゲームらしく、私も2017年当時にはTwitter上でその名前を見かけていました(プレイ画像もいくつかは見かけていたり) かなりグロテスクな描写の多いゲームで、当時見かけた猟奇的な画像がずっと脳裏にこびりついており、真相を見ればようやくすっきりするだろうということで購入。エロゲというよりグロゲですね、R-18Gです間違いなく。

 ルート分岐はnormal endとtrue endだけで、エロゲ初心者には優しい構造となっています。

 作中の流れは真相編(?)に突入するまでは決まっていて、

①焦点となる人物に関するシナリオが展開する(恋人や協力関係になったり等)

②黒い箱が登場し、開封すると「人体の一部」(眼球や右腕等)が見つかる

③屍という名の少女により主人公が殺される

④時間が巻き戻り①へ。その際、黒い箱の中身に対応した部位が①の焦点となったヒロインから失われる。或いは存在がなかったことになる。

 という感じですね。消失するキャラクターと、部位欠損するキャラクター(上記画像では右目)には法則性があるのですが、そういった部分も含めて考察しながら進めるノベルゲームという印象が強かったです。

 

 物語が終盤に差し掛かるまでは延々と上記のループを続けるので、普通に読んでいたらかなりマンネリがあると思います。文章をよく読んでいればちょっとずつズレが発生していったり、情報の取捨選択をしたりと楽しめるのですが……。

 あとは真相編(?)でネタバラシされる、log world上での出来事だったという部分は純粋な推理では到達しようのない反則技ですので、考察しながら楽しむ本作において一番の邪道だったなと思います。まあ、ノーヒントというわけでもなかったのですが(デリート、log worldという単語や、現実ではあり得ない移動等)

 と、なんだかネガティヴな評価をしがちなものの、逆に言えばこれくらいしか非の打ち所がなく、とてもよく練られたシナリオが織りなす猟奇・怪奇ホラーとして非常に楽しめました。エロゲのはずなんですけど、エロ方面より純粋な読み物として評価したくなる作品です。まあ、エロの内容が尖り過ぎているからというのもありますが(笑)

 

 この物語を分解すると、人の理性と野性の対決ともとれるのではないでしょうか。

 ブルーメシンドローム(本作の造語である精神疾患)が生み出すギフト(いわゆる第二の人格)は、己の快楽の為に損得勘定すら捨てた衝動的・刹那的な凶暴性を持ち合わせています。その余りの獣性のため、作中で「化け物」とまで揶揄されました。

 画像左の少女が本作の真ヒロインなのですが、彼女は既に上記のギフトの凶暴性により惨殺されていました(CGもありますが、余りにも惨いので流石に掲載が躊躇われます)
 少女に関連する人物(主人公、少女の母親)がギフトへ復讐を始めたことが本作の起こりとなりますが、ここで問題が発生します。二重人格を持つ患者達の罪は一体どこに帰属するのか? ということです。作中ではギフト(第二の人格)の罪は患者そのものの罪ではないとして、第二の人格のみを取り除き患者個人の罪はないものとなっています。

 これは現実でもたまに発生している事例ですよね。精神障害精神疾患を患った者が刑事責任能力を問われ、時に無罪判決が下っています。まあ、現実の問題はギフトなんて明確な罪の所在がないので一層複雑なわけですが……。

 話を戻しまして、私はそうした罪を憎んで人を憎まずな精神には大変な理性を感じています。理屈で言えばそうですが、同一の人物が罪を犯したわけですから「そうですか」と納得など出来ないものです。

――同じように惨殺してやりたい。

 と思うのが人の心というものでしょう。ましてや恋人、ましてや愛娘です。

 ですが、それでも仮想空間での復讐に留まったのは理性あってのことでしょう。獣ではなく、人として黒い感情を吐き出したわけですから。

 

 主人公のtrue endでの行動について。

 まず本作に終止符を打つ形としては綺麗に終わっていますね。自身のギフトの残滓をlog worldで樺音(屍)に殺してもらい、最後に現実にいる自分を自身で殺す――つまるところ自殺なわけですが、その構図は主人公が始めた「己への復讐劇」を締めくくる結末として他にない展開だったと思います。

 また、この世で自死する生き物は人だけで、獣にこれを選ぶものはいません。ギフトの人格の悉くも自らの死に対して強い拒絶を示していました。本作が理性と野性の対決であるならば、最後に理性が野性を浄化した物語であるともとれるでしょう。

 

 と、おおよそ作品への考察的なものはここまでです。

 私の推理では殺されているのは主人公で、黒い箱の中身を確かめていくごとに自分が死んでいることを思い出していき、やがて自身である決定的な部位が見つかり、死を受け入れる……的な予想をしていました。死んでいたのは主人公ではありませんでしたね(笑) キャラクターの相関図についての考察はほぼ的中していました。ギフトがここまで凶悪な性格をしているとは思いまでんでしたが。

 この二人は癒しでしたね。これでサブキャラクターってどういうことなの……。志依(左側)が作中で一番好きなキャラクターでした。公式サイトにある体験版ではルートがあるらしいので、あとでやってみようと思います。

 肉感でいえばフーカが一番エロゲらしいキャラクター、かつそれらしいCGが多かったなと思います。もう一人の巨乳担当はなんかえげつなかったので……。そういえばフーカ√の周回で「(眼帯の)下がどうなっているのか気になりますか?」的なことを言っていましたが、回収されないままでしたね。どうなっていたのでしょうか。恐らく、あの問いかけにフーカそのものへの意味はなくて、どちらかと言えば主人公に対する「お前の右目がないことを思い出したか?」的な意味合いだったのかなと思っています。

 この画像でも肉付きの良さが強調されているのはフーカらしいなと思う一方で、でもこのあと何本もナイフを刺される上に内臓ズタズタにされて首刎ねられて死ぬんだよな……と何とも言えない気持ちになります。

 このゲーム途中からは碌なHシーンがなかったな……。

 

 個人的な体感として、いきなり2005年→2017年のゲームに飛んだので、絵の綺麗さや操作の便利さなどに感動しました。

 心が削られるグロさですけど、名作でした。